「暑い夏にはなんといってもかき氷。一年中かき氷を注文できる店が大泉学園駅の南口にあった。それは「華樓(ガロ)」。なかでも絶品だったのが小豆ではなく金時豆をたっぷりのせた宇治金時と自家製シロップをかけた氷いちご。店はまるで甘味処みたいなのに洋菓子もナポリタンもある。そんな華樓を思い出させる夏が来た」
(中略)
「ポルボローネというスペインのお菓子は、日本においては昭和時代に出現した。店主の川崎和人さんによれば、千葉県出身である彼は、手に職をつけるべく県内で和菓子屋に入門。和菓子の技術を身に着けてしまうとそれに飽き足らず洋菓子へ。やがて帝国ホテルにたどり着く。高名なパティシェの下で修業することとなった。今では日本でも市民権をもつようになったポルボローネだが、当時はレシピもなく、開発に当たっては『スペイン語で書かれたお菓子の本を、師匠とともに苦労して翻訳した』。つまり川崎さんはポルボローネ職人の草分け的存在なのだ。かくして独立して大泉に店を持つに至り、ポルボローネはいち早く当地にもたらされたのである。店にはお世話になった師匠の写真を掲げた。ある意味大泉は日本のポルボローネの発信地のひとつ…といっても過言ではないだろう」
(中略)
「華樓には地元だけでなく多くのファンがいた。そして数々のメディアで紹介されてもきた。しかし2020年8月、惜しまれながら閉店。川崎さんは転居して現在埼玉県内に住んでいる。それではこの大泉ゆかりのポルボローネは幻となってしまうのか?」
「そんな心配をしているファンもいるはずである。でもご安心を。川崎さんが同業者として親交を深めてきたナカタヤ洋菓子店会長の中田清さん方にレシピは委ねられたのだ。中田亘伯留社長は閉店前の華樓を訪れ、自店の近江大介シェフとともに作り方を伝授されている。幻にならないでほしいという川崎さんの願いと近江シェフの情熱とがポルボローネの再現を促すかもしれない。
この取材をきっかけに中田亘伯留社長が『地域の方々に川崎さんのポルボローネを味わってもらいましょうか』と提案してくださった。大泉学園町の洋菓子店にバトンはしっかり渡ったようである。
本格的な商品化はまだ先になるにしても、『地元に幸運をもたらすお菓子…』が誕生するとなれば私たちにとってもうれしい話である。
ポルボローネは、8月10日から 31日までナカタヤ本店にて期間限定で販売される」
▶大泉ポルボローネ物語 | プチぶんか村